商品価値は、個々の満足とその総和で成立する
実に、しっかりとした解説が本書の特徴だ。問いに対して、著者の意見をとり入れた構成で、要点解釈を行なっている。これだけの高度な記述と説明を、「早わかりQ&Aシリーズ」というような、印象にも残らないスカーフのごとき装飾は不要だ。全体をファッションビジネスの基礎を解く「入門編」5章と事実からの命題、命題からの理論的結論、それと感性からの現実を率直に捉えた「実践編」4章で構成する。
小テーマを見開き2ページの体裁で、90の問いと解説を収める。ファッションビジネスと他産業との異同や分野間の関係をテーマに的を射た質問と、これに対する端的な答えと補足をもって解説する。シリアルな文字列の中にではあるが、関連する他の質問番号にリンクも張ってある。
記述に対する説明は、マーケティングの4P、MDの5適、市場環境の4CやSWOT分析、さらにはKM、ファッションサイクルの影響などに及び、読者は気軽に手にした本書の充実した本文に有意義な時間を得ることだろう。キイワードによって、学問上も実務上も偏りのない考察やそれに向けた課題を提示してあり、また時代性の話題も取り入れてある。
これだけの圧縮した問題意識を読者に感じ取ってもらえなかったら、何とも勿体ない一冊である。コストとは、努力と犠牲である(p.108)。これをどこに注ぐか。自社ブランドが右上に来るマトリックスが作れるか(p.157)。これは、ブランドの話しばかりではない。含意はこうも問うている。もしあなたが、何度考え直しても右上に来るようなマトリックスの縦と横の軸が見つからなかったら、あなたは何の特徴も持ち合わせていない、ということだ。
目次、編章節。索引、なし、残念。参考文献、あ...
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